猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

はじめまして。

はじめまして、つんです。 『猫額の手帖』というタイトルで、まとまりのないお話を書いていこうと思います。 語り手の「私」のまわりにある不思議な世界と、残酷な現実。ほころびを縫いながら生きることの難しさに苛まれる。 たどり着く場所があるのかわかり…

#Twitter300字ss 第48回「霧」『岐路、もしくは幕間』

#Twitter300字ss 第48回「霧」『岐路、もしくは幕間』 霧雨に立つ古びた教会で祈りを捧げていた。 (主よ、我らが父よ、何故) 冷たい床へ繋がる膝は震え、胸の前でかたく握る手には力がこめられている。 (何故、私なのですかっ) 三年を病床で過ごした母を亡く…

#Twitter300字ss 第47回「食べる」『チョコレート文明』

#Twitter300字ss 第47回「食べる」『チョコレート文明』 秋のコンビニは魔物だ。帰宅したテーブルへ新作のチョコレートを並べ、インスタントコーヒーを淹れる。心構えをして正座で祈る。 「いただきます」 透明のフィルムをはがすと甘い香りがする。まずはヘ…

#twnvday 9月14日

#twnovel 安定した会社で肩書きをもらい、学ぶことも多く充実していた。「お前だけが頼りだよ」音沙汰がなかった父の介護が降りかかり、人生が転落していく。貯金を切り崩し心身をすり減らす。親子だからというだけで、仕事も夢も奪われり。こいつを生かさな…

#Twitter300字ss 第46回「秋」 『対岸のひと』

#Twitter300字ss 第46回「秋」 『対岸のひと』 病床の窓から見える川縁で赤一面に咲く彼岸花。その上を歩いて母が迎えに来るようで恐ろしい。一週間の入院生活は気が滅入る。(心配してあげてるのよ) 首筋へ冷たい風が流れた。嫌なものがあちこちにいて悪寒が…

#Twitter300字ss 第45回「帰る」 『おかえりなさい』

#Twitter300字ss 第45回「帰る」 『おかえりなさい』 汗ばんだ背中が不快で、ミントティーをマグカップへ淹れる。猫達の落ち着かない様子を見ると、よくないものが近くにいるらしい。マリアの描かれたメダイのブレスレットを手首にはめる。 カチャン。小さな…

#Twitter300字ss 第44回「約束」 『猫、帰る。』

#Twitter300字ss @Tw300ss 第44回「約束」 『猫、帰る。』 「こんばんは、お世話になった猫です」 五連勤の最終日を終電であがり、上着を脱いだところへ女性は現れた。理解が追い付かない間に部屋へ上がりこまれる。チェーンはかけたまま。怪奇か過労かどち…

#Twitter300字ss 第43回「空」 『雨の裏側』

#Twitter300字ss 第43回「空」 『雨の裏側』 靴の中までずぶ濡れで傘は役に立たない。季節の変わり目に体調を崩し、久しぶりに外出できたと思ったらこれだ。私の雨女っぷりは衰えていないらしい。 オープンカフェの軒から滴る雨水の下で、白いローブが軽快に…

#Twnvday 4月14日

#twnvday 「おはようねぼすけさん」きつね色のトーストに手作りのいちごジャム。甘めのカフェオレを色違いのマグカップにそれぞれ注いで笑う彼と、一緒に朝食をとる休日が私の宝物。「いただきます」目が覚める。時計はちょうど十二時をさしていた。休日にだ…

#Twitter300字ss 第42回「遊ぶ」 『おんな、あそび』

#Twitter300字ss 第42回「遊ぶ」 『おんな、あそび』 なめらかな白い背中は、ブラジャーのホックをつけて肩紐を合わせる。毎日行う動作でも、彼女の所作は美しかった。 三十を過ぎた私の背中なんて、ぶよぶよにむくんで、家事のあれこれで凝り固まって、試着…

#Twitter300字ss 第42回「遊ぶ」 『いきる、おんな』

#Twitter300字ss 第42回「遊ぶ」 『いきる、おんな』 カフェに買い物にカラオケに。大型連休を女友達とそれらしく遊び歩いて、帰りの電車を待っている時だった。向かいのホームに立つ若い女性の、真っ赤なエナメルのパンプスに目を奪われる。「お前、女捨て…

#Twitter300字ss 第41回「新しい」

『新曲』 スマートフォンに繋げたイヤホンから、好きなアーティストの新曲が流れる。ラブソングなんて世の中に溢れているのに、その人の言葉がその人の声で歌われると、朝一番の白湯のように優しく体内に広がった。昨夜のメールのそっけなさに君は気づいただ…

ヘアドネーションってなんだろう

冷たい雨がやむと、春になります。新しい生活、新しい友人。心機一転、髪を切ろうと思い立つ人は多いのではないでしょうか。 最近の女性誌はボブやベリーショートを特集しているページもあります。そのとき、ちょっとだけ考えてみてほしいのです。 「ヘアド…

ヘアドネーションをしてきました

ヘアドネーションをしてきましたヘアドネーションとは↓ ヘアドネーションってなんだろう - 猫額の手帖 元々、セミロングを維持していた長さがありましたが、1年前からヘアドネーションをするために長さをそろえ、髪のメンテナンスをしてきました。対応サロン…

#twnvday 3月14日

初恋は珈琲みたいだ。砂糖、ミルク、焙煎時間、豆の産地、ドリップ方法。いくらでも味を変えられる。それは思い出されるあの時間が、酸っぱかったり苦かったりするのと似ている。「ブラックコーヒーばかりだと胃を痛めるよ?」珈琲を飲めないあなたの味は、…

#twnvday 2月14日

#twnvday 黒渕の冷たさに掌の感覚がおかしくなる。棺の中の夫は見事なまでに白一色で、タキシードより似合わない。本人もわかっていて、プロポーズの時に着ていたスーツ姿で笑っている。「迎えに来たよ」遺影を滑り落としながら、その胸に飛び込んだ。 #twno…

#Twitter300字ss 第39回「試す」

#Twitter300字ss 第39回「試す」2回目の参加です。#猫額の手帖 と同じ世界の妖精が出てくるお話です。よろしくお願いします。 『リボン』ジャンル・オリジナルhttp://nekobitainote.hatenablog.com/entry/0203tw300ss01 『試しの行為』ジャンル・オリジナルh…

『試しの行為』

銀のスプーンが綺麗に磨かれた横で、木くずを入れられたホットミルクが冷めていく。我が家には先日からコボルトという妖精がいる。ブラウニーやシルキーと比べいたずら好きで、ひとつ良いことをしてひとつ迷惑なことをする。叱るべきかわからず悩んでいると…

『リボン』

「これ、試着してもいいかしら」 梱包をといた後の紫色のリボンを見つけて、小さな妖精が問いかけてきた。猫じゃらしになるだけなので了承すると、くるりと回り体に巻き付けていく。妖艶で美しい。スマートフォンのカメラを構えたくなるが、そもそも写らない…

#猫額の手帖064

雪解けの町にしなやかな音が響く。せつせつと水に変わっていく途中で生まれるものが、妖精たちの生命力や不思議な力に繋がるらしい。自然そのものを蓄えて生きる姿は、射す光のもとできらきらと輝いている。深呼吸をして冷たい空気を肺に送り込む。私も少し…

#猫額の手帖063

土鍋でお粥を作っているときの湯気は、妖精に好まれる。お米のやわらかい香りと溶き卵が合わさると、それはもう多くの歓喜が聞こえる。美味しい食べものは皆を幸せにするのだ。たまに換気扇の下の取り合いになり、ガスコンロのまわりで喧嘩が起こるのは、危…

#猫額の手帖062

昨晩から気温は下がり、とうとう雪になった。東京に雪が降るのは珍しい反面、降りだすと交通網のマヒを引き起こし、大変な騒ぎになる。待つのも待たされるのも、得意ではない。ココアはすっかり冷めて、私の心もやさぐれかけている。早く会いたい。二人で寄…

#twnvday 1月14日

ドーナツにはなぜ穴があいているのか。二杯目のカフェオレを注いでもらい、他愛ない疑問で時間をつぶす。そろそろ閉店時間が迫っていた。隠し事をしている恋人のそっけなさが嫌だ。今日こそは問い詰めてやろう。入り口に見慣れたスーツ姿を見つけ、構えたド…

#猫額の手帖061

自分の中で溜まっていく、どろりとした黒くて汚い気持ち。妖精は敏感に悟る。善きものは癒しを与える。悪いものは虚ろへ引きずり込む。いつまでも記憶に繋がれて、痛みを鮮明に思い出しては、何が正しかったのか問いかける。答えは出るはずがなく、外れない…

#猫額の手帖060

現実からは逃げられない。どんなに笑っていても、どんなに幸せでも、私の心に黒いものが寄り添って離れない。これは悪魔なのかと問いかけた。けれど返事はなく、それよりもたちが悪いことだけしかわからなかった。私が負けないように、私はへらへら笑え。最…

#猫額の手帖059

同居人との暮らしにはルールがある。「楽しくご飯を食べること」喧嘩しても、怒っても、悲しくても、ふたりでいただきますを言うときには、笑っていようと決めた。すぐ機嫌が悪くなる私に手を焼いていた彼は、根気強くそばに居てくれた。どれほどの感謝も足…

#猫額の手帖058

昨日降った雨のおかげで、久しぶりに湿度のある空気を吸う。少しだけ地面に日が射すと、妖精たちが楽しそうに泳ぎだす。新しい大気は彼らの力の源泉だ。ゆるやかなメロディーに乗り光が近づく。そっと手を引かれる感覚がして、慌てて歩き出す。誘われてはい…

#猫額の手帖057

ウクーが眠そうに耳を動かす。そろそろ同居人が帰ってくる時間だ。気難しい彼女のお気に入りは、あまり動物が得意ではなかったはずなのに、いつの間にか立派に下僕を務めている。「まだかしら」「もうすぐだよ」夕飯の支度をしながら返事をする。それははっ…

#猫額の手帖056

穏やかな気持ちの為に自分を甘やかす。人混みを抜けてたどり着いた店は、ちょっと穴場だ。階段を下るとすぐに席へ通された。メニューを眺めて少し悩み、注文する。薄暗い店内で囁くような会話が流れる。テーブルへ置かれたフレンチトーストを満面の笑みで迎…

#猫額の手帖055

実に良くない。つい買ってしまった焼き菓子を頬張る。アーモンドがたっぷりかかっていて美味しい。あと一口、というところで何とか手を止められた。このままでは夜の体重計が恐ろしい。ペーパーに移して戸棚へ置いた。お礼はいいからと胸中で言うと、妖精は…