猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

2018-01-03から1日間の記事一覧

#猫額の手帖013

「大丈夫だよ」私はよく悪夢を見る。目が覚めるまでの間に、同居人は背中を撫でて、猫たちも布団にもぐりこむ。ゆっくり瞬きをすると、ようやく脳みそが現実へ帰ってこられた。過去の記憶に縛り続けられている。ぬくもりをぎゅっと握りしめる。「大丈夫だよ…

#猫額の手帖012

等しく無力な夜。どうして懺悔したくなるのだろう。愛し方がわからずに言葉や態度で傷つけ、見放されないことを安堵する。相手が妖精や悪魔だったら呪い殺されている。同居人の内側に居る何かが、その類いだと知っていた。それでもこの手を離したくない。ご…

#猫額の手帖011

カフェのテラス席に案内され、寒さとコーヒーの温かさが戦っていると、蟻の子供がこちらを見ていた。余っていた角砂糖を爪で割り、イスの下へ放る。「きょうはみんなで、ジュースだ!」嬉々とした声がする。午後のティータイムを楽しく過ごせるのは、人間だ…