猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

#Twitter300字ss 第43回「空」 『雨の裏側』

#Twitter300字ss 第43回「空」

『雨の裏側』
 靴の中までずぶ濡れで傘は役に立たない。季節の変わり目に体調を崩し、久しぶりに外出できたと思ったらこれだ。私の雨女っぷりは衰えていないらしい。
 オープンカフェの軒から滴る雨水の下で、白いローブが軽快に揺れている。世界の光が集まり、跳ねる音に喜びを含む。そこから異世界に通じていることに気がついた時、向こうも私を見つけた。金色の髪の間から鋭い眼差しを受ける。
 妖精の善悪を判断できる知識や勘を、私は持っていない。ただ、この鬱屈とした天気を楽しめるのは羨ましかった。意識が返ってきて、目の前の空に大きな虹が見えた。どこか遠くで陽が降りたのだろう。もやがかかっていた頭がすっきりしている。帰ろう、我が家へ。