猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

2018-01-06から1日間の記事一覧

#猫額の手帖046

バンシー、嘆きの妖精。彼女達は熱心な教徒のために泣く。だからこの葬儀には居ないはずなのに、どうして瞳を赤く染めているの。届かぬ声を荒げる姿へ、伸ばしかけた手がぺたりと触れる。鏡だ。向こうに見えるのは私だ。涙に埋もれているのは、助けられなか…

#猫額の手帖045

同居人の膝を借りて休む。先日出掛けた際に、悪いものに当てられた。人間の見えない場所に居るものが、美しいばかりだと勘違いしていたのかもしれない。誰しも裏表があるのに、向こうにはないなんて、勝手な考えだった。もっと知らなければ。妖精を、悪魔を…

#猫額の手帖044

息苦しさでめまいがする。久しぶりに人混みへ出た途端この調子では、社会復帰など出来るのかと不安の種が増える。視界に捉えた非常口のランプ。世界から逃げ出してしまえたら楽なのに。「お手伝いしましょうか」首筋にひやりと声が張りつく。心に闇を落とし…