猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

#Twitter300字ss 第六十六回「橋」

#Twitter300字ss 第六十六回「橋」

 

『青空に虹の橋』

 

 闘病を終えた母を追うように去年の晩夏、愛猫が虹の橋を渡った。気にかけていた咳の状態を診てもらいに動物病院へ連れて行き、余命宣告を受ける。一畳程のペット用酸素室をレンタルして看取りを決めた。
 透明な壁に遮られても撫でられたくて、ふて寝して、起きてご飯を催促しながら咳き込んで。度々ひきつけの後、安楽死を迫られた。
「自分で逝くわ」
決めた彼女は私の腕の中で呼吸をやめた。
 どんなに揺さぶっても名前を呼んでもむせび泣いても、魂の分だけ軽くなった体は冷えて硬くなるだけだった。火葬の日はどこまでも青い空。また会おうと約束した翌年、検査薬に二本の橋が浮かぶ。初めての陽性。天国の散歩を満喫したんだね。
 おかえりなさい。