猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

『ただそこに在るもの』

 特別なことはない。プレゼントはお礼みたいなものだから。
 いつもより少し高いケーキを買った日は、アンティーク製の小皿におすそわけを移し、猫たちの手の届かない戸棚へそっと置いておく。
 翌日、目が覚めてからカーテンを開くと、妖精たちがそれぞれの薄羽を七色に輝かせ、ハミングを共鳴させて飛んでいる。
 朝の光。
 冬のまなざし。
 自然界にしか存在しない美しさを、私に教えてくれる。
「ありがとう。今日は素敵な朝だね」
 妖精と共生するには、毎日の敬意と、時々のささやかなプレゼント、感謝の気持ちを忘れてはいけない。昨晩のケーキは気に入ってもらえたようで、降り注ぐ日差しの中、楽しげなダンスはしばらく続けられていた。

 

----- ----- -----

#Twitter300字ss 第38回「贈り物」

企画参加作品