猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

Twitter #猫額の手帖

#猫額の手帖004

あなたのぬくもりを思い出すには、自販機で買ってから15分経ち、ぬるくなったミルクティーのペットボトルがちょうどいい。冷え症のてのひらで私の頬を撫でる。お互いに言葉足らずで、衝突してしまうけれど、伝わる体温は確かに共有され、その時ばかりは世…

#猫額の手帖003

ゴブリンが台所から走り去る後ろ姿を見て、今夜のチーズグラタンをあきらめる。彼らの悪戯癖には何度も負けていた。オーブンレンジの残り時間はさだかではなく、焼き直しするのには手間がかかりそうだ。同居人の帰宅には間に合わせたい。#猫額の手帖 — つん …

#猫額の手帖002

いつかまた逢いましょう。哀しみを胸に、凛とした背中を見送った。赦されるなら、あの人の幸せを願う。私の慰めを祈り続けた、たったひとりの友を。ひとまわり大きな月夜にそよぐ妖精よ、ヒイラギの葉を一枚、届けて。彼女を痛むすべてのものから、守れるよ…

#猫額の手帖001

ポプラの木を寝床にしている妖精は、風のものらしい。母が存命だった頃、そのような話をいくつか聞いたはずだが、幼心とともにサラマンダーに焼かれて食われたのだろう。いまは思い出そうとするだけで頭痛がする。鎮痛剤を口へ放り、ブラックコーヒーを飲み…