猫額の手帖

猫の額ほどの小さな物語を紡いでいます。

#Twitter300字ss 第39回「試す」

#Twitter300字ss 第39回「試す」
2回目の参加です。
#猫額の手帖 と同じ世界の妖精が出てくるお話です。よろしくお願いします。

 

『リボン』
ジャンル・オリジナル
http://nekobitainote.hatenablog.com/entry/0203tw300ss01

 

『試しの行為』
ジャンル・オリジナル
http://nekobitainote.hatenablog.com/entry/0203tw300ss02

『試しの行為』

 銀のスプーンが綺麗に磨かれた横で、木くずを入れられたホットミルクが冷めていく。我が家には先日からコボルトという妖精がいる。ブラウニーやシルキーと比べいたずら好きで、ひとつ良いことをしてひとつ迷惑なことをする。叱るべきかわからず悩んでいると、張り詰めた空気に変わる。
(裏切り者)
 幻聴だ。足早に和室へ行くと伏せてあるはずの遺影と目が合う。
「きしし」
 笑い声が聞こえ、低い口調で返した。
「あなたとは共生できない」
 子供の癇癪のようにどたどたと足を踏み鳴らす。どこまでなら許されるか試したのだろう。がしゃんっ、と窓が開いて冷たい風が部屋へ押し寄せる。悪意の前で笑える私はもう居ない。身震いをしながら呼吸を整えた。

『リボン』

「これ、試着してもいいかしら」
 梱包をといた後の紫色のリボンを見つけて、小さな妖精が問いかけてきた。猫じゃらしになるだけなので了承すると、くるりと回り体に巻き付けていく。妖艶で美しい。スマートフォンのカメラを構えたくなるが、そもそも写らないのだと自分をなだめる。
「とてもお似合いですよ」
 微笑みかけると彼女は嬉しそうに踊り始める。指先までなめらかにしならせると、ほのかな芳香が広がる。スミレだ。昨今の寒さに肩をすくめすぎて、慢性化していた頭痛が和らぐ。思いがけず恩恵を受けたので、素敵なリボンはそのまま持っていってもらうことにした。
 春が近づいて、花の妖精が動き始める。賑やかな季節を迎える準備をしようか。

#猫額の手帖064

#猫額の手帖063

#猫額の手帖062

#twnvday 1月14日